質疑応答の要点

問:「思い込み均衡はどのような均衡か?ワードロップ均衡と同じものであるのか?」

答:ワードロップ均衡とは異なるものである.ワードロップ均衡は「どのドライバーも自分の経路を変更することによって自分の旅行時間を減少させることが出来ない」状態と言える.一方,思い込み均衡は「どのドライバーも自分の経路を変更することによって自分の旅行時間を減少させることが出来ないと思い込んでいる状態」である.それは思い込みであって,実際は経路を変更すると,旅行時間が短くなる場合がある.しかし,各ドライバーは自分は旅行時間が最も短い経路を選択していると思い込んでいるため,経路変更する動機を持たず,均衡(収束)している.このような均衡は一意ではなく,多数存在する.

問:「発表したモデルも恣意的なものではないか?」

答:パワーポイント12ページの内容に関する質問である.

合理的な経路選択モデルは最短経路を選択するものであり,経路選択の方法は一つに限定される.しかし,限定合理的な(手続き合理的な)経路選択モデルを考える場合,どの程度合理的な経路選択を考えれば良いのか,単純な経路選択の方法(たとえば毎回同じ経路を選択するなど)から複雑な経路選択の方法までたくさんある中,どの程度の複雑さの経路選択の方法を考えれば良いのか,という問題が発生する.このときモデル構築者がある複雑さの経路選択の方法だけを取り上げると問題になる(その取り上げたある一つの複雑さの経路選択方法を考えるだけで良いのかということである)。したがって,そのような問題(どの程度複雑な経路選択の方法を考えれば良いのかという問題)を回避するために,単純な経路選択方法から複雑な経路選択方法まで幅広く記述できる自由度の高いモデルを構築することが本研究のアプローチである.質問の回答としては,発表で述べた「恣意的」という言葉は経路選択の方法が単純なものから複雑なものまである中で、ある一つの複雑さの経路選択の方法(例えば前回よりも所要時間が多くなると別の経路を選択するという経路選択方法)を取り上げ、それだけをモデル化した場合、そのモデルは多くある経路選択方法のうちの一つをモデル化したに過ぎないという問題がある。この場合、その経路選択方法だけを取り上げたことは恣意的といえるかもしれない。したがって、本研究では、単純なものから複雑なものまでは幅広く記述できる自由度の高いモデル構築した。発表での「恣意的」という言葉はそのような自由度の高いモデル自体(本研究のモデル自体)が恣意的かどうかという恣意的ではなく,ある限定された経路選択の方法をモデル化したものはその経路選択方法を取り上げ方が恣意的という批判を受けるということを主張したものである.